掲載日:令和2年3月26日 最終更新日:令和2年4月23日
ご存知の方も多いと思いますが、相続税の申告などとは違い、相続による不動産の名義変更(相続登記)にはいつまでにしないといけない、といういわゆる期限がありません。
なのでついつい後回しに...という方も少なくないでしょう。
しかし、他の司法書士事務所のサイトや相続に関するサイトを見ていると「相続登記はお済みですか?」とか「相続登記はお早めに!」といった文言をよく見かけます(ちなみに当サイトにはそういった文言は存在しません)。
言い方に差はあれど、いずれも相続登記は早めにしておいた方がいいですよ、という趣旨です。
なぜ皆が皆そういうのでしょうか。
これから解説いたします。
勘違いしていただきたくないのが、これから申し上げるのは相続登記を早めにすべき理由ではなく、相続登記を早めにすべきと言われている理由、です。
私自身は、相続登記は早いに越したことはないけど...というくらいのスタンスです(皆さまが相続登記を面倒に感じる気持ちも十分理解できますので、お金もかかりますし)。
では解説に移ります。
まず、皆さまに抑えていただきたいポイントが2つございます。
以下の2つです。
① 遺産分割協議は相続人全員でしなければならない
② 相続人というのは放っておくとどんどん増えていく
まずは①について。
不動産を所有していた方が亡くなったため、法定相続分以外で相続登記をおこなうという場合、遺産分割協議をする必要があります。
法定相続分以外で相続登記をおこなうとは、例えば相続人のうち誰かひとりの名義にするとか、相続人3人のうち2人の共有名義にするなどといったケースのことです。
法定相続分で登記するとか、そもそも相続人が1人しかいない・他の相続人が相続放棄をして結局相続人が1人になったというケースでは、遺産分割協議をする必要はありません。
さて、相続人が複数いれば、普通は相続人のうち誰かひとりの名義に変えますよね。
その場合には遺産分割協議が必要となってくるわけですが、厄介なことに遺産分割協議は相続人全員でしなければならないのです。
1人でも欠けた遺産分割協議は無効となってしまいます。
で、②に移ります。
なにを今更、と思うでしょうが、相続人というのはどんどん増えていくものです。
Aさんが亡くなり、Aさんの子であるBさんとCさんが相続人になりましたが、その後Bさんも亡くなり、Bさんの子(Aさんの孫)であるDさんとEさんが相続人になり、そうこうしているうちにCさんも亡くなり、Cさんは子だくさんで...
この辺にしておきます。
気が付いたら相続人の数がとんでもないことになっていた、なんてことは決して珍しいことではありません。
昔の人は子だくさんな方も多いですから。
ここで①に戻ります。
遺産分割協議は相続人全員でする必要があります。
長らく放置していた相続登記、さあやろうかとなり、誰かひとりの名義に変えるにも、相続人全員とコンタクトをとる必要があります。
核家族化が進んだ現代、比較的近い親戚でもあまり連絡を取っていないという方も多いでしょう。
これだけでも一苦労です。
さらに、ただ遺産分割協議をすればいいだけでなく、遺産分割協議書を作成して相続人全員の実印を押して印鑑証明書とともに提出をしない限り、法務局は相続登記を受け付けてくれません。
考えるだけで面倒くさくなってきましたね。
面倒になったからといって専門家に頼もうにも、こういったケースは専門家にとっても面倒であることに変わりありません。
専門家も商売ですから、それなりの報酬をいただかないとやってられません。
よほど良心的な専門家にでも頼まない限り、相当の支払いを覚悟しなければなりません。
おわかりいただけたでしょうか?
こうならないように、皆が皆相続登記は早めにしておいたほうがいいですよ、と言うわけです。
ただ、上記はあくまでも可能性の話です。
亡くなって年月は経っているけど子は多くないとか、親戚皆近くに住んでいるとか、それぞれあるでしょうから、ぶっちゃけそこまで気にすることはないと思います。
それでも、危機感を持ち始めて相続登記しておこうかなと考えたあなた、とても素晴らしいことです。
相続登記は必ずしも司法書士に依頼しなければならないわけではないので、ご自身でされても結構ですが、それなりに大変ですし、リスクもあります。
難しいことはよく分からないとか、自分でやってる時間がないという方も含め、ぜひお近くの司法書士にご相談ください。
たまたま私の事務所が近場だったという方や、ここまで親切に教えてくれた司法書士さんにぜひお願いしたい!という方は、ぜひ私までご相談いただけたらと思います。
ニュースなどでご存知の方もいるかもしれませんが、相続登記に期限を設ける、いわゆる義務化が検討されています。
いつからかなどの細かいことはまだはっきりとはしていませんが、義務化はほぼほぼ確実な情勢です。
おそらく罰則も設けられます。
相続登記の専門家として、動向は注視しているところです。
ですので、義務化されてバタバタすることのないよう、手を打っておくことをお勧めします。
ただ、費用の助成(もちろん条件はあるでしょうが)のあるかもしれないとのことなので、複雑な案件をお持ちの方は、準備は怠らないようにしつつ、様子を見てもいいのかなとも思います。