私がなぜこのような問いかけをするかというと、実際に相談をお受けしている際に、「あ、相続放棄について勘違いをされているな」と感じることがよくあるからです。
遺産に興味がないとか、他の相続人と関わりたくないなどという理由で、放棄をしたいというご相談をよくいただきますが、こういった場合に考えられる手段としては、以下の二つがあります。
① 遺産は他の相続人に全て譲り、自身は一切相続しないという内容の遺産分割協議をする
② 家庭裁判所に相続放棄の申述をする
分けて書いたのでもうお気づきでしょうが、実は①のことは相続放棄とは言いません。
これを勘違いしている方、結構いらっしゃいます。
①のことは、俗に遺産放棄という言い方をしたりするのですが、相続放棄と遺産放棄は、似ているようで全くの別物です。
ではどのような違いがあるのか、具体例を挙げつつ説明していきたいと思います。
相続放棄をすると、法律上その方は始めから相続人でなかったものとみなされるというのが最大の特徴です。
夫Aが亡くなり、妻Bと子Cの二人が相続人になったとします。
Cが相続放棄をすると、Cは始めから相続人でなかったものとみなされます。
つまり、Aには子がいないのと同様ということになり、相続権が次順位の相続人に移ります。
Aに直系尊属(父母や祖父母)がいれば直系尊属が、直系尊属がいなければ兄弟姉妹が相続人となります。
これに対し遺産放棄は、単に遺産分割協議により遺産を相続しないことになるというだけで、相続人の地位まで失うわけではありません。
ですから、直系尊属や兄弟姉妹が相続人になるということはありません。
これが相続放棄と遺産放棄の最大の違いです。
先ほど全く別物だと言ったのがご理解いただけるかと思います。
それだけでなく、手続きの面でも違いはあります。
遺産放棄は、ただ遺産分割協議において自身は相続したくない旨を主張し、遺産分割協議書に印鑑を押せばいいだけです。
これに対し相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出することにより行わなければなりません。
また、遺産分割協議は死後いつまでにしなければならないという期限はありませんが、相続放棄は自身のために相続があったことを知ったときから3ヶ月以内という期限が存在します。
先ほどのケースを少し変え、相続人である子がCとD二人いるケースで考えてみます。
この場合に、Cのみが相続放棄をすれば、相続人はBとDになりますから、その後の手続きの負担が多少減るというメリットはあります(結局BDで遺産分割協議をすることにはなるので、遺産放棄の方がはるかに楽ではあるのですが)。
ですが、「母に全て相続させたい」といった理由で、CDがともに相続放棄をすると、すでに説明したとおり相続権が次順位の相続人に移ってしまいます。
直系尊属の方が相続人になるのであればまだいいかもしれませんが、兄弟姉妹が相続人になる場合、昔の方は兄弟姉妹が多いというのも珍しくありませんから、相続人が一気に増えるということも考えられます。
さらに、すでに亡くなっている兄弟姉妹がいれば、その子(Bから見れば甥や姪)が相続人になります。
このように、迂闊に相続放棄をしてしまうとかえって相続人が増えてしまい、面倒事になりかねないのです。
こういったケース、実は結構あります。
仮にその後面倒事になってしまったとしても、相続放棄は基本的に撤回が認められませんので、相続放棄というのを正しく理解したうえで慎重に判断しなければなりません。
とはいえ、上記のとおり相続放棄には期限がありますので、あまり悠長にしている時間はないとお考えの方もいるでしょう。
そんなときは、早めに専門家(司法書士や弁護士)に相談するのが一番です。
ご自身の置かれている状況やご自身の意向を伝えれば、どういった方法をとればいいかのアドバイスがもらえます。
そのまま相続放棄の手続きを任せることも可能です。
相続放棄について、ご自身のみで考えられるのは少々危険だと思いますので、専門家に相談することを強く推奨いたします。
いけべ司法書士事務所でも、相続放棄に関するご相談を承っております。
相続放棄をするという結論になれば、相続放棄の手続きもお任せいただけますし、遺産放棄をするという結論になれば、遺産分割協議についてや不動産の名義変更などをお任せいただけます。
ご相談だけでももちろん構いません。
相談料は無料です。
また、お急ぎの方のために、営業時間外や土日祝日も可能な限り対応いたしますので、遠賀郡や北九州市及びその周辺地域の方はぜひ当事務所までお気軽にご相談ください!
掲載日:令和3年1月13日
最終更新日:令和5年5月1日