新たに家を買われた方、または配偶者が家を買われたという方、自身や配偶者に万が一のことがあったときのこと、気になりませんか?
今回は、家を買われた方(=家の登記名義人)が死亡した場合に、家はどうなるのか、また組んでいたローンはどうなるのかということについて解説していきます。
まずはローンのことからお話しします。
皆さま、「団信」というのはご存知でしょうか?
団信とは、「団体信用生命保険」の略で、ローンの返済中に万が一のことがあった場合に、ローンの残債が全額弁済される保証制度のことをいいます。
聞き慣れないという方もいるでしょうが、ローンのほとんどは団信に加入することが前提(借り入れの条件)となっています。
団信に加入していれば、万が一のことがあっても保険会社がローンの残債を弁済してくれますので、ローンは完済ということになり、家族の方がローンを負担することはありません。
一方、団信に加入していなかった場合には、誰もローンの肩代わりはしてくれませんので、ご家族がローンの残債を負担することになってしまいます。
団信に加入していないという場合は、今後の対応について慎重に検討する必要が出てきますので、すぐに司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。
続いて家についてですが、まず真っ先にやることは登記手続きです。
具体的には、以下のとおりです。
① 相続登記
② 抵当権抹消登記(団信に加入していた場合)
団信に加入していなかった場合は、やや手続きが複雑ですので、ここでは割愛します。
まずは、①の相続登記から。
相続登記とは、家の名義を相続人の方に変更する手続きのことをいいます(いわゆる名義変更というやつです)。
登記名義人が死亡したとしても、登記簿上の名義人は自動的に書き換わってくれるわけではありません。
戸籍謄本などの必要書類を用意し、登記申請書を作成したうえで法務局へ申請してはじめて、家の名義は書き換えられます。
これが相続登記です。
ちなみに、2024年4月1日より、登記名義人が死亡してから3年以内に相続登記をしなければならないという期限が設けられます(参考記事:相続登記の義務化について)。
仮に相続した家を売却することになった場合でも、相続登記の手続きをしないと家を売却することはできません。
ですので、住み続けるにせよ売却するにせよ、早めに相続登記を済ませておくことが重要です。
次に、②の抵当権抹消登記について。
ローンを組んでいる場合には、家の登記簿に抵当権の登記がされています。
抵当権というのは、ざっくりいうとローンの返済が滞った場合に家を強制競売にかけることで回収することができるという権利(いわゆる担保というやつです)なのですが、先ほど説明した団信でローンが完済されることにより、抵当権自体は消滅します。
が、こちらについてもまた、抵当権の登記が自動的に消えてくれるわけではなく、法務局に対し抵当権を消す登記の申請をしなければなりません。
これが、抵当権抹消登記です。
ちなみに、相続登記も抵当権抹消登記も、司法書士に依頼して代行してもらうことができます。
登記名義人の方が亡くなったという場合には、ぜひ司法書士にご相談ください。
ここからは、自身や配偶者に万が一のことがあったときのために確認しておくべきこと、注意しておくことについて述べていきます。
ひとつは、誰が相続人になるのかについてです。
まず、配偶者は必ず相続人となります。
すでに離婚している場合や、事実婚、内縁の配偶者には相続する権利がありませんので、相続人にはなりません。
そして、配偶者以外の相続人については、法律上順位が定められています。
このように、自身の置かれている状況で誰が相続人になるかが変わってきますので、しっかりと確認するようにしておきましょう。
相続人には、遺産を相続するにあたり、取り分として法律上定められた割合、いわゆる法定相続分というのがあります。
配偶者と子ども一人が相続人の場合は、それぞれ2分の1ずつ相続します。
子どもが二人いる場合は、子の法定相続分である2分の1を頭数で分けますので、配偶者が4分の2、子が4分の1ずつを相続します。
このように、法律によって法定相続分が定められているわけですが、相続人間での話し合いで法定相続分でない分け方をすることも可能です。
これが、遺産分割協議です。
例えば、家を配偶者の名義にしたいという場合には、家を配偶者が相続する旨の遺産分割協議書を作成して相続人全員の実印を押し、印鑑証明書と合わせて提出しなければ相続登記はできません。
注意してほしいのは、「相続人全員の実印が必要」ということです。
こういう仕事をしていると、相続人全員から実印をもらうのに苦労するケースにも出くわします。
注意喚起として、遺産分割協議が大変になりがちなケースをまとめていますので、そちらもぜひ確認してみてください(参考記事:遺産分割協議が大変になりがちなケースまとめてみました)。
掲載日:令和4年12月2日