「相続登記はお早めに!」というのは散々言われているところです。
しかし、なぜ早めにしないといけないのかという点は、皆さま今ひとつピンとこないのではないでしょうか。
それでは、具体例を挙げてみましょう。
ちなみに、これからお話しすることは司法書士であれば割とよく聞く話です。
誰にでも起こり得ることと認識していただければと思います。
Aさんが平成30年に亡くなり、Aさん名義の自宅が遺されていました。
Aさんの妻であるBさんは施設に入っており、Aさん名義の自宅にはだれも住んでいません。
また施設の費用を捻出する必要も出てきたため、自宅はBさんが相続することとしたうえで、売却しようという話になりました。
しかし、相続した不動産は相続登記をしないと売却することができません。
自宅は相続登記をしていなかったため、Bさんの名義に変更する必要がありました。
AさんとBさんの間には2人の子がいましたが、二男であるDさんが令和2年に亡くなっていたため、Aさんの相続人はBさんとCさん、Eさんの3人となります。
しかし...
今回の場合、自宅の相続登記をするには、亡くなった登記名義人(=Aさん)の戸籍に加え、手続き時点で亡くなっている相続人(=Dさん)の戸籍も必要になります。
そのため、Dさんの戸籍を取り寄せたところ、実はDさんは結婚と離婚を繰り返しており、初婚の配偶者との間に子のFさんがいることが判明しました。
Fさんの存在は、他の相続人の方も全く把握しておらず、今回戸籍を取り寄せたことではじめてその存在を知ったのです。
この場合、もちろんFさんも相続人となります。
ですので、相続登記をするには、Bさんが相続する旨の遺産分割協議書に、Fさんにも実印を押してもらい、印鑑証明書を提供してもらう必要があります。
しかし、誰もFさんの存在を知らなかったので、連絡の取りようがありません。
前提である相続登記の手続きが進まなくなってしまったので、結局自宅を売却するという話も頓挫してしまいました。
今回のケースでは、Aさんが亡くなった後すぐに相続登記をしていれば、スムーズに売却することができました。
Aさんが亡くなってすぐの時点ではDさんがまだ存命だったため、Aさんの相続人はBさんとCさん、Dさんの3人です。
この3名が遺産分割協議書に実印を押せばいいため、相続登記も比較的スムーズにできたでしょう。
それを怠ってしまったために、今回のトラブルが起こってしまったのです。
このようなケースは、「もっと早く相続登記をしていれば...」という典型例です。
相続した不動産を売却できなければ困るというケースもあろうかと思います。
売却という選択肢が少しでも頭の片隅にあるという方は、すぐさま相続登記を済ませるべきなのです。
掲載日:令和3年12月2日
最終更新日:令和5年4月26日