相続登記(相続による不動産の名義変更)は、いつまでにしないといけないという期限が現時点ではありません。
それに、皆さんからすれば必要性がいまひとつピンとこないところもあるでしょうから、ついつい放置してしまっているという方、多いのではないでしょうか。
今回は、相続登記を放置するとどうなるのか、デメリットやリスクについて解説していきます。
不動産の名義人が亡くなれば、所有権はその相続人に行くわけですが、その相続人も亡くなってしまうと、更にその相続人にといったように、放っておくと相続人はどんどん増えていきます。
上の図のような感じです。
これの何が問題かというと、相続登記をするためには、相続登記をする時点での相続人の全員の関与が必要なので、手続きが大変になってしまうということです。
具体的にいうと、遺産分割協議書に相続人全員に実印を押してもらい、印鑑証明書ももらう必要があります。
相続人が増えすぎてしまうと、全員から実印と印鑑証明書を集めるという作業がすごく大変です。
また、相続人が増えれば、手続きに非協力的な人や、分け前をよこせと言ってくる人が出てこないとも限りません。
そういった人が一人でもいるだけで、手続きが先に進まなくなってしまいます。
解決のために弁護士を立てないといけなくなり、事態が長期化して莫大な手間やお金がかかってしまうということもよく聞く話です。
いざ相続登記をやろうとしても、登記名義人が亡くなって時間が経っていればいるほど余計な手間や費用がかかってしまう傾向にあります。
相続登記をするには、亡くなった名義人の方の出生から死亡までの全ての戸籍が必要なのですが、相続人の方も亡くなっている場合には、その相続人の方の全ての戸籍も必要になってきます。
戸籍謄本は1通450円、除籍謄本や改製原戸籍(古い戸籍のことです)は1通750円かかります。
相続人も亡くなっていたりすると、戸籍だけでも結構な金額(数万円にまで膨れ上がったケースもありました)になってしまいますし、そもそも集めること自体が大変です。
それに、放置して様々な問題が発生すれば、解決のための手間がかかります。
司法書士の手を借りることになれば、それなりの費用を覚悟しておく必要があります。
難しい案件ほど、司法書士から請求される報酬額は高くなるのが通常だからです。
一方、まだ亡くなって日が浅い場合は、相続登記の手続きはそこまで難しくはありませんから、司法書士に頼んだとしても支払う報酬額は比較的少なく済みますし、自身で相続登記の手続きを行うという選択肢も考えられます。
費用を惜しんで放置するよりも、早めにやっておいた方が結果的に手間や費用も少なく済むことが多いのです。
相続した不動産を売却するためには、まず相続登記を済ませておかなければなりません。
不動産の名義人が亡くなれば、亡くなった時点で実体上所有権は相続人に移ります。
その後売買が成立すれば、相続人(=売主)から買主に所有権が移る、という流れです。
この所有権の流れを登記簿に忠実に反映させなければならないとされているため、売買に先立って相続登記が必要になってきます。
相談の場でこのことを話すと、たまに「えっ」というリアクションが返ってくることがあります。
ですが、よく考えてみれば、亡くなった方が売主になること(売買契約を結ぶこと)は当然できません。
不動産の売買でも、売主から買主への名義変更が行われることになるわけですが、亡くなった方名義のままでは、登記所(法務局)は売買での名義変更を受け付けてくれません。
つまり、そもそも相続登記を済ませなければ、相続した不動産の売却ができないということです。
ところで、先述の「いざやろうとしたとき」とは、大半が相続した不動産を売却することになったときです。
売却することになったので、重い腰を上げて相続登記をやることになった、といった感じです。
余計な費用がかかるだけならまだいいかもしれませんが、相続人が増えたことによるトラブルが発生して相続登記がうまくいかず、売却をあきらめたり弁護士を立てる羽目になったというのも決して珍しい話ではありません。
相続した不動産の売却を考えている方は、いずれ必要になるのですから、早めに相続登記をしておくに越したことはないのです。
ここまで、相続登記を放置することによるデメリットやリスクについてお話ししてきました。
こうしたデメリットやリスクを回避するためにも、相続登記は早めにするのが大切だということ、ご理解いただけましたでしょうか。
相続登記に限った話ではありませんが、いずれしなければならないことは早めにやっておいた方がいいです。
それに、相続登記を放置することは、それにより起こりうるデメリットやリスク、さらに費用面での負担についてを下の代の方へ強いることにもなりかねないということを肝に銘じておいてください。
令和3年4月21日、改正法が成立し、相続登記が義務化されることとなりました。
期限は亡くなってから3年以内とされ、違反した場合は10万円以下の過料に課されてしまいます。
改正法が施行されるのはまだ少し先ではありますが、施行前に登記名義人が亡くなっている不動産についても期限が適用されます。
放置しててもいいというのはこれからは通用しなくなりますので、現時点ですでに登記名義人が亡くなっているという場合は早めに相続登記を済ませておきましょう。
いけべ司法書士事務所でも、もちろん相続登記に関するご相談をお受けいたします。
初回のご相談は無料、お見積もりも無料で承りますので、遠賀郡や北九州市及びその周辺地域の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
掲載日:令和3年3月23日
最終更新日:令和5年7月23日