今回は、過去に受任した、遺言書が絡んだ案件をご紹介します。
守秘義務の観点から細かい部分は変えてありますが、受遺者が先に亡くなった場合の、遺贈の登記についてです。
上の図において、Aが「甲土地はBに相続させ、乙土地はFに遺贈する。遺言執行者はBとする。」という内容の遺言書を作成していたが、BがAより先に亡くなってしまい、その後Aも亡くなったというケースです。
この場合、当該遺言書のうち甲土地に関する部分は無効となり、甲土地については通常の相続が発生することとなります(相続人はC・D・Eの3人)。
話し合いの結果、甲土地はCが相続することとなりました。
そうなると、このケースでは
① 甲土地のCへの相続登記
② 乙土地のFへの遺贈の登記
を行うこととなります。
①の手続きについては通常の相続登記と同様です。
一方、②の遺贈の登記の手続きですが、このケースでは遺言執行者でもあるBが先に亡くなっています。
遺言執行者がいれば、遺言執行者が遺贈の登記の手続きをすることになりますが、今回のケースではそれができません。
ではどうするのかというと、家庭裁判所に請求することによってあらためて遺言執行者を決めることができます。
民法に条文があります。
【民法第1010条】
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
ただ、これはあくまで任意であり、相続人全員による手続き(=相続人全員を登記義務者とする登記申請)ももちろん可能です。
その場合は、相続人全員が登記申請人となりますので、全員から委任状をもらう必要があり、それはそれで面倒です。
相続人が多数いるといったこともありますし、基本的にはあらためて遺言執行者を選任したほうが良いでしょうが、このケースでは甲土地について相続人全員から遺産分割協議書に実印をもらう必要があります。
その際に委任状にも印鑑をもらえば良いので、わざわざ遺言執行者を選任するまでもないということで手続きを進めていきました。
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