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一人遺産分割協議と相続登記

今回は、いわゆる一人遺産分割協議と相続登記についてです。

 

論点としては若干マニアックな話ではありますが、事案としてはありがちな話ではあります。

分かりやすくするため、ケース別で分けて解説していきましょう。

子が複数いる場合


相続関係図(子が二人)
父と母が相次いで亡くなり、子二人が相続したというケースです

では、例をあげつつお話ししていきます。

 

Aが平成25年に亡くなりましたが、遺産分割協議をすることなく、Bも令和1年に亡くなりました。

 

AB間には子のC及びDがおり、A名義の不動産があったのでC及びDがそれを相続した、というケースです。

 

このケースでは、CとDの話し合いによりCが不動産を相続する旨が整えば、AからCへ直接相続登記をすることが可能です。

本題:子が一人のみの場合


相続関係図(子が一人)
今度は子が一人であるケースです

ここからが本題、今度は子が一人しかいないというケースです。

 

こちらのケースでは、Bが亡くなった時点でAの相続人はCのみということになります。

 

よりシンプルなケースですし、一見AからCへ直接相続登記をすることができそうではあります。

 

実際、Cには、Aの相続人及びBの相続人としての二重の立場がありますから、かつては二重に立場があることを利用して遺産分割協議をしたこととし(これがいわゆる一人遺産分割協議です)、遺産分割協議書を作成してCへ直接相続登記をすることが可能でした。

 

しかし、平成26年に出された判決で、そのような遺産分割協議書は登記原因証明情報としての適格性を欠くものとされました(要は使えないということです)。

 

つまり、直接相続登記はできず、

 

① B及びCへの所有権移転登記(2分の1ずつ)

 

② BからCへの持分移転登記

 

をしなければならないものとされたのです。

 

Bも亡くなったことで相続人はC一人しかいないのだから、もはやAの相続について遺産分割協議をする余地は無いよね、という理屈です。

 

このように、最終的に相続人が一人になるかそうでないかで、相続登記の内容が大きく変わってくることに注意いただければと思います。

雑感


完全に余談ですが、ここからは私の個人的な意見を少し。

 

まあ、上記の理屈は分からないでもありません(二重の立場はどこにいった?という気もしますが)。

 

また、所有権移転登記というのは、所有権の移り変わりを忠実に登記簿に反映させなければなりませんから、上記①及び②のように二重の登記申請をしなければいけないというのも理解できます。

 

しかし、子が複数いるケースと比べ、手続きが少々迂遠であり、均衡を失している感は否めません。

 

それに、一人っ子かそうでないかという、当人にとってはどうすることもできないことによって結論が変わってしまうこと自体どうなのかと。

 

ちなみに相続登記を司法書士に依頼する場合、登記申請1件につきいくら、という報酬設定をしている司法書士がほとんどです。

つまり、一人っ子の場合、費用がより多くかかってしまうわけです。

 

このように、色々思うところがある、というのが正直なところです。