現在、高齢者の約5人に1人が認知症であると言われています。
認知症が他人事と言えなくなってきている現代社会において、親に認知症の兆候が見られる場合、相続などについて対策を講じておくことも重要です。
例えば母親が認知症になってしまった場合に、その後父親が亡くなると、父親の遺産の相続手続きの場面で問題が生じてきます。
どのような問題が生じるか、また問題が生じないための相続対策について、本記事にて解説いたします。
父親が亡くなり、母親と子が相続人となったが、母親が認知症であるというケースでは、父親の遺産の相続手続きにおいて、問題が生じてきます。
遺産を分けるには、遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議は相続人全員でしなければなりませんので、母親も遺産分割協議の当事者となります。
しかし、母親が認知症ですと、遺産分割協議に参加することができません。
遺産を誰が相続するか、その是非について判断をすることができないからです。
では遺産分割協議が全くできないかというとそうではなく、家庭裁判所に対し成年後見人の選任の申立てをして成年後見人を立てれば、遺産分割協議をすること自体は可能です。
しかし、成年後見人の選任は手間がかかりますし、それなりの費用がかかることも覚悟しなければなりません。
相続人に認知症の方がいると、非常に厄介なことになってしまうのです(参考記事:認知症の相続人がいる場合の相続手続き)。
遺産分割協議ができないということは、不動産の名義を変えたり、預貯金の手続きをしたりといったこともできません。
このようなことにならないためにも、父親が健在のうちに対策を講じておくべきです。
相続に関するご相談を受けて、その中で「父親が亡くなったので相続手続きをお願いしたいけど、母親が認知症で...」と言われるケース、すごく多いです。
もちろん、一言で認知症と言っても状態は人それぞれですから、こちらとしても直接お会いするなどして判断しているところではありますが、やはり厳しい見通しをお伝えせざるを得ないケースも少なくありません。
対策の重要性、ご理解いただければと思います。
ちなみに当たり前ですが、父親が亡くなってしまってはどうすることもできませんし、父親も認知症であれば、相続対策をすることすらかなわなくなります(理由は遺産分割協議ができないのと同じで、相続対策をするという意思が確認できないからです)。
相続対策は、早め早めが肝心です。
では、どのような対策を講じれば良いのでしょうか。
相続対策として一番有効なのは、遺言書を作成することです。
例えば、「自宅は長男に、預貯金は次男に相続させる」といった具合です。
遺言書を作成しておけば亡くなった時点で遺言書の効力が生じ、例えで言えば自宅は長男が、預貯金は次男が相続することになりますので、遺産分割協議をする必要がないのです。
ですので、母親が認知症であったとしても、相続手続きを進めることができます。
遺言書の作成は、ぜひ検討すべきでしょう。
そして、遺言書は、公正証書遺言という形で作成することをお勧めします。
公正証書遺言とは、公証役場というところで作成する遺言書のことです。
遺言書は手書きで作成することも可能ですが、公正証書遺言の方が確実で紛失等の心配もなく、また遺言書の検認という、家庭裁判所で行われるいわゆる開封の手続きを省略できるなど、メリットは多いです。
専門家としても、公正証書遺言を強く推奨しているところです。
認知症の推定相続人がいる場合の対策として、遺言書の作成は有効です。
ただ、トラブルを避けるためにも、どういった内容の遺言書を書くべきかは精査するべきですし、遺言書以外の選択肢もありますので、専門家にきちんと相談することが重要です。
いけべ司法書士事務所でも、遺言書作成を含めた相続対策について、ご相談を承っております。
皆さまのお話しを丁寧にお伺いし、最適な対策をご提案いたします。
先述しましたが、相続対策は早めが肝心です。
初回のご相談は無料ですので、北九州市や遠賀郡、及びその周辺地域の方は、ぜひいけべ司法書士事務所までご相談ください!
掲載日:令和4年4月26日
最終更新日:令和6年6月10日