相続した自宅は母親と子どちらの名義に変更すべきか

父親名義の自宅を、母親と子が相続したというケース


父親が亡くなり、母親と子が相続するというのは、相続の典型的な事例です。

 

そして、父親名義の自宅に父親と母親が同居していたということが多いと思われますが、こういったケースでは自宅の名義を母親に変更しようと考えるのが通常だと思います。

 

実際、私への相談内容も、「母の名義にしたい」とか「母の名義にしようと思っている」というのが非常に多いです。

 

しかし、実際に母親の名義にして本当に良いのかというのは、しっかりと考えておく必要があります。

母親の名義にすることによって起こりうるリスクやデメリットというのも、少なからず存在するからです。

 

今回は、そういったリスクやデメリットについて解説していこうと思います。

 

父親が亡くなり、母Aと長男B及び次男Cの、計3名が相続したというケースでお話ししていきます。

母親名義にすることで、どのような問題が生じうるか


1.母親が認知症になってしまうと自宅の売却ができなくなる

現在、高齢者の5、6人に1人が認知症になっているというデータがあります。

父親亡きあと、母親が認知症になってしまうというのも、十分考えられる話です。

 

自宅を母親A名義に変更したあと、Aが認知症になってしまったとしましょう。

 

Aを施設に入れる費用を捻出するために、BCが自宅を売却したいと考えたとしても、は認知症のため売買契約をすることができません。

 

民法の条文を見てみましょう。

 

民法第3条の2

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

「法律行為」とはやや抽象的な概念なのですが、意思表示を持って構成される、一定の法律効果を発生させる行為のことをいい、契約も法律行為の一つです。

 

認知症により判断能力を欠く人は意思能力を有しないとされるため、仮に契約をしたとしても無効となってしまうのです。

 

実際、売りたくても売れないという状況になって困ってしまう方、すごく多いです。

 

もちろん売却が全くできなくなるわけではなく、どうしても売却をしたいという場合には家庭裁判所に対して成年後見人の選任申立てをし、成年後見人を立てることにより、売却をすること自体は可能です。

しかし、成年後見人の選任申立ては手間と時間、費用がそれなりにかかってくることもあり、ハードルは非常に高いと言わざるを得ません(結果的に売却を断念する方が圧倒的に多いです)。

 

母親名義に変更すると、こういったリスクが生じうることは念頭に置いておくべきでしょう。

2.二度手間になってしまう

母親名義に変更すると、今度は母親が亡くなったという場合に、また同じように名義変更の手続きをする必要があります。

 

母親Aの名義に変更するためには、「自宅はAが相続するものとする」旨の遺産分割協議書を作成し、ABC全員の実印を押す必要があります。

それを、印鑑証明書をはじめとした必要書類と合わせて法務局(登記所)に提出し、名義変更の申請をすることになります。

 

そして、今度はAが亡くなったという場合、また同じ作業をする必要が出てきます。

 

司法書士に手続きを依頼すれば、報酬も二重で支払う必要がありますし、名義変更の申請をする際に支払う登録免許税(いわゆる印紙代)も二重でかかります。

 

手間もそうですが、何より費用がもったいないです。

 

父親が亡くなった時点では相続人はABCの3名であり、その時点でBCいずれかの名義にすることも可能です。

 

いずれ子が相続することを考えると、はじめから子の名義にしてしまう方が合理的とも言えます。

子の名義にすることによるリスクやデメリットもある


しかし、だからといって子の名義にしたとしても、それによるリスクやデメリットがないわけではありません。

 

例えば、長男Bの名義に変更したとしましょう。

その際に次男Cは、自身が遠方に居住していることもあり、Bの名義にすることに一旦は合意しましたが、その後事情が変わり自宅を使いたいと考えたとしても、簡単には名義を変更することはできません。

 

もし名義変更をしたいという場合、Bは亡くなっているわけではありませんので、相続ではなく贈与での名義変更ということになるのですが、贈与での名義変更は相続での名義変更に比べ、手続きの段階でかなり費用がかかってしまいます(参考記事:相続と生前贈与での名義変更の費用の違い)。

 

また、贈与となると贈与税不動産取得税もかかってきますので、簡単に名義変更をし直すというわけにはいかないのです(売買するという方法もありますが、あまり現実的ではないでしょう)。

 

もちろん、BからAの名義にし直したいという場合も同じです。

 

この点は、気をつけておくべきでしょう。

まずは司法書士に相談されることをお勧めします


この問題については、言ってしまえば正解がありません。

 

ここまでは合理性を重視してお話ししてきましたが、なにより皆さまのお気持ちというのが一番かと思います。

 

ですが、それぞれの選択肢にどういったメリット・デメリットがあるかはきちんと把握しておくべきであり、思わぬトラブルや余計な出費などに繋がってしまってはいけません。

 

難しい判断ですので、一度司法書士にご相談されることをお勧めいたします。

どういった方法が最適かは、皆さまの置かれている状況によって大きく変わってくるからです。

 

司法書士であれば、こうしたご相談を多数受けてきています。

 

経験に基づくアドバイスや、他の方がどういった選択をされたかなど、可能な限り皆さまのお力になれるかと思います。

司法書士池部有哉事務所にご相談ください!


当事務所でも、「誰に名義変更をすべきか」というご相談を多数お受けしてきました。

 

中には、誰の名義にするかを決めたうえで当事務所に手続きを依頼したものの、当事務所からのアドバイスにより考え直したという方もいらっしゃいます。

 

まずは皆さまのお話しをお聞かせください。

 

当事務所は、初回のご相談が無料!

ご希望であれば、司法書士が出張することも可能です(費用等は要相談)。

 

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遠賀郡や北九州市、及びその周辺地域の方は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

掲載日:令和4年3月14日

最終更新日:令和4年3月24日