抵当権抹消登記をしないとどうなる?

司法書士の代表的な業務である不動産登記。

 

その中でも皆さんにとって比較的身近なものとして、住宅ローンを完済したことに伴う抵当権抹消登記があります。

 

ただ、この抵当権抹消登記の手続き、依頼者の方とお話ししていると皆さん必要性がいまいちピンときていないように見受けられます。

 

そのためか、手続きをしないまま放置しているケースも少なくありません。

 

しかし、抵当権抹消登記をしないで放置していると様々なデメリットやリスクが生じえます。 

 

この記事では、

  • 抵当権抹消登記をしないとどうなるのか
  • 抵当権抹消登記をしないで放置することによるデメリットやリスク

について、不動産登記の専門家である司法書士が解説していきます。

抵当権抹消登記をしないとどうなるのか


住宅ローンを完済すれば、抵当権自体は消滅します。

 

ただし、土地やご自宅の登記簿に記載された抵当権の登記は、完済したことで自動的に抹消されるわけではありません。

 

所定の書類を準備し、法務局に対し抵当権抹消登記の申請をすることによってはじめて、登記簿上の抵当権を抹消することができます。

 

そのため、住宅ローンを完済したら、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が皆さんに交付されます。

 

「必要な書類は渡すから、あとは皆さん自身で手続きしてくださいね」というわけです。

 

このように抵当権は、自動で抹消されるわけでもなく、金融機関が抹消してくれるわけでもないのです。

 

ですのでそのまま何もせず、抵当権抹消の手続きをしないでいると、登記簿上の抵当権はずっと残ったままということになります。

売却ができなくなる


登記簿上の抵当権が残ったままでも、直ちに実害があるかと言われれば決してそうではありません。

 

しかし、長い目で見れば、抵当権抹消登記をしないことによるデメリットというのも存在します。

 

一番は、抵当権抹消登記をしないと不動産の売却ができないという点です。

 

ほぼすべての売買契約書で、売主は抵当権などの登記のないきれいな状態で不動産を引き渡さなければならない旨の条項が記載されています(そういった条項がない契約書は存在しないといっても過言ではありません)。

 

実際に抵当権の登記がある不動産の売買では、既に完済していれば売買による名義変更と事前または同時に、売却代金をもって完済の手続きをするということであれば名義変更と同時に、抵当権抹消登記の手続きをおこないます。

 

不動産を売買する際、売主は不動産に登記された抵当権などを抹消するのはいわば常識なのです。

 

売る側から考えると、少々面倒に感じることでしょう。

 

しかし、傍から見れば、登記簿上に抵当権の登記が残ったままだと完済したかどうかの判断ができません。

 

実際にはローンを完済していたとしても、第三者からすれば登記簿を見て判断するしかないので、これはやむを得ないことです。

 

買う側としては、抵当権の登記が残ったままの不動産を買おうとは思いませんよね。

 

一応誤解がないように言っておくと、抵当権の登記が残ったままでも売却をすること自体は法律上何の問題もありません。

 

しかし、抵当権の登記が残ったままの不動産に基本的に買い手はつきませんから、そういった意味で、実質的に抵当権抹消登記をしないと売却ができないということなのです。

 

いかがでしょうか。

抵当権抹消登記をしないでいると、いざ処分しようとなったときに抵当権の登記が障害となってしまうケースに発展しかねないのです。

 

また、これは信用問題でもあります。

 

ローンを完済したということを第三者にしっかり公示するためにも、抵当権抹消登記の手続きをすることは重要なのです。

余計な手間や費用がかかる可能性が出てくる


その他のリスクとして、いざ手続きをやろうとしたときに余計な手間や費用がかかってしまう恐れがあるというのが考えられます。

 

住宅ローンの完済後に金融機関から交付される書類には、金融機関名や所在地、その代表者の氏名が記載されているものがあります。

 

書類を受け取った後に放置すると、代表者が変わったり、所在地を移転したりで、書類に記載されている事項に変更が生じる可能性があります。

 

中には、合併などによりそもそも金融機関が消滅してしまったということもあります。

 

手続きをしないでいるうちにそういったことがあった場合、別の書類が必要になったり、場合によっては金融機関に書類の再発行をしてもらわなければならなくなるといったことが起こりえます。

 

ご自身で抵当権抹消の手続きをやろうにも非常に困難になってしまいますし、余計な費用もかかってしまう可能性もあります。

 

司法書士に抵当権抹消の依頼しても、通常より高い費用を払わなければならないといったことにもなってきます。

 

また、抵当権抹消登記の手続きをしないまま名義人が亡くなると、その相続人のかたが抵当権抹消登記の手続きをすることになります。

 

相続人の方に手続きの面だけでなく、金銭面でも余計な負担をかけることになってしまうのです。

 

抵当権抹消登記はご自身の責任で、金融機関から書類を受け取ったら、すぐに手続きを済ませるようにしましょう。

抵当権抹消登記は早めが肝心!すぐに手続きを済ませましょう


ここまで、抵当権抹消登記をしないことによるデメリットやリスクについて解説していきました。

 

まだお済みでないという方は、速やかに手続きを済ませるようにしてください。

 

もちろんご自身で手続きをしていただいても構いませんが、面倒だということであれば司法書士に任せるのも一手です。

 

司法書士に依頼するとなると高額な費用がかかるというイメージを持たれるかと思いますが、抵当権抹消登記であれば費用はそこまでかかりません。

 

当事務所であれば、書類を受け取ってすぐのご依頼であれば実費を含めても2万円かかりません。

 

お困りの方は、ぜひお近くの司法書士にご相談ください。

 

特に、金融機関から書類を受け取ってから時間が経っているという方は、司法書士に相談し、書類を確認してもらうようにしましょう。

まとめ


本記事の内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 抵当権抹消登記をしないと、登記簿上の抵当権の登記は残ったままに
  • 抵当権の登記が残ったままだと、売却ができない
  • いざやろうとしたときに、余計な手間や費用がかかる可能性が
  • 困ったときは司法書士に相談を

抵当権抹消登記をしないと、いざというときに困るというのがポイントです。

 

抵当権抹消登記は放置せず、必ず済ませておくようにしましょう!

掲載日:令和2年11月4日

最終更新日:令和5年3月28日